人間の欲望に際限ないこと、贅沢にはすぐ慣れてしまうことは前回の記事の通りだけど、味覚に限ってはまだまだ贅沢を知り尽くしているとは言えないと思っている。
そんなことを書くと
「そんなことよく言うわ。ヒデちゃんは食べ物にとってもうるさかったに」
亡くなった祖母の声が空から聞こえてくるようだけど、それにはボクも反論したい。
「食べ物にうるさかったんじゃなくて、賞味期限を気にしてたんだよ」
なにしろ冷凍庫に入れておけば肉でも魚でも永遠に食べられるという思想の持ち主だ。
確かに何万年前のマンモスが冷凍漬けになって発見されるけど、その肉が食べられるかといったら話は別だ。
「自己防衛のためだったんだよ」
祖母の苦笑いが目に浮かぶが、とにかく、食に関してはまだまだ知らない味がたくさんあるのは事実だ。
申し訳ないと思うのだが奥さんをフレンチなどに連れていったこともない。
トリュフとかフォアグラとか、結婚式で食べたような気もするが、なにしろ最近は結婚式よりお葬式に出る方が多い。
そんな僕が出会ったのがこれだ。
黒トリュフ風味のポテトチップス。
近くのスーパーで見かけてずっと気になっていたのだが、なかなか買うまでに至らなかった。
なにしろ高い。一つが600円以上する。
でも今年のお正月に、正月だからという自分への言い訳のもとにめでたく購入、食べてみた。
うまい!
正直、これがトリュフ風味なのか全く分からない。ましてや黒トリュフなのか皆目見当がつかない。
でもうまい、ボクにとってのトリュフはこれだ。
贅沢は極めないほうが幸せでいられる。
600円のポテトチップスの購入をためらうくらいでちょうどいいと思っている。
ただし、奥さんがどう思っているかは知らない。本心を聞かない方がやはり幸せでいられるような気がする。