この年になると「初めての経験」というものが少なくなってきて、それに伴い何かに感動するということも少なくなってくる。
だけど、まだまだ経験したことがないことが身近にあったりする。
枯葉が舞うなかを歩く、そんな何でもないようなことだけど、今までに体験したことがなかったことに気づいた。
日中はポカポカと暖かくて上着を車に置いたまま外に出たのだが、夕方4時近くなると急に風が強く吹き始めた。
秋が終わって、急に冬の到来を告げるかのような風だ。
枯葉がまるで雪のように空を舞う。
宙に舞う枯葉をつかもうと手を伸ばすけど、向かってきたと思った枯葉はすんでのところで急に身を翻してすり抜けてしまう。
あとからあとから次々と枯葉が舞い落ち、枯葉をなんとかキャッチしようとしばらく夢中になった。
よく考えてみたら、こんなに枯葉が舞う中を散歩するというのは初めてのことだということに気づいたのだ。
紅葉が美しい林だが、この風でずいぶん葉が散ってしまうことだろう。
本格的に寒くなる前にもう一度この道を散歩しよう。道に落ちた枯葉を拾い上げながらそう思った。